絶対の誇り(「NHK知られざる大英博物館」を見て)
7月28日の産経新聞によると、韓国・朝鮮日報の週刊誌『週刊朝鮮』に在米記者による特集記事として「世界が経済危機で右往左往するなか、欧米ではこれまでの日本の危機対応策を“日本モデル”として評価する声が高まっている」という異例の日本を評価する報道があったとのこと。 これを100パーセント、真に受けるつもりはありませんが、これだけ世界が信用不安・経済危機に揺れる中、円だけが高騰を続けるということは、円高に苦しむ輸出産業には申し訳ありませんが、我が国の経済力、国力をある程度高く評価しても良いのではないでしょうか。 経済にかぎらず、有史以来我が国が諸外国に影響を及ぼしてきた事例は決して少なくありません。浮世絵に代表される絵画、源氏物語をはじめとする小説、江戸の長屋や町火消しなどの町人文化、陶器や磁器あるいは鉄器に漆器といった様々な工芸品等々、たくさんのものやアイデアが世界に出回り、その地に根付いたものが数多くあります。寿司をはじめとする食文化もそうですね。 毎週木曜日の夜9時に放送される、「和風総本家」(テレビ大阪制作)という番組があります。この番組、バラエティ系の形式はとっていますが、日本の職人や技術のすごさ・優秀さを深く掘り下げていて、広く海外に滲透しているさまなどを細かく紹介しており、「こんなものまで」と驚かされることがしばしばです。そうしたものを作った職人さんの誇らしい表情も印象的です。 ところが、どこか日本人は心の隅に、西欧あるいは中国(特に「中国4千年の歴史」)に対するコンプレックスのようなものを持っていて、ために時には自虐的と思われるほどの行動となり、時には慎み深い特性として評されるように、なにか妙に遠慮したようなところがあります。特に、政治・外交においてその傾向は顕著です。もっと我々日本人は、自国の文化や国民性に高い誇りを持ってもいいのではないでしょうか。つまるところは自国の歴史に対する「絶対の誇り」がないのでは、と感じるのは私だけでしょうか。 原因は先の大戦に負けたから、という考え方もあります。確かにそれも一因でしょう。しかし、先の大戦の前、すなわち明治維新から太平洋戦争までを考えても、やはりそのようなコンプレックスは、あったのではないかという気がします。常に西欧に追いつけ追い越せで「富国強兵・臥薪嘗胆」がスローガンでした。 江戸時代はどうかと言いますと、これは他国との交渉がまったく無かった時代なので、コンプレックスもなにも生まれようがなかったのでしょう。しかし、さらにさかのぼって、元寇、遣唐使の時代はどうであったか。対外勢力を脅威と感じ、またそこから何かを吸収しようとする意思は、コンプレックスとつながるかどうか、定かではありませんが、まったくなしとは言えないような気がします。 これらは、基本的には「縄文・弥生時代の古代の我が国は、神話の伝承以外明確な歴史がよく分っておらず、大半の日本人自身が、古代の日本は、どちらかと言えば野蛮人的で、人々はコシミノを着けた生活をしていた。」と感じているところに大きな原因があるのではないでしょうか。 先日、NHKスペシャルで 「知られざる大英博物館」という特集(6月24日~7月8日)があり、今から120年前に、一人のイギリス人が日本から持ち帰った膨大な古墳の写真資料やコレクションが紹介されていました。そうした資料から解き明かされる日本の古墳は、ピラミッドや始皇帝陵とならぶ世界最大級の墓なんだそうです。 つまり、古代日本は、独自の進化を遂げた一大文明を有していた可能性が極めて高いのです。ところが、この文明には文字資料がほとんどないため、謎に満ちています。いまでは、ほとんど無視されています。そして、日本は西欧・中国に学んで、文化を発展させたという常識あるいは定説につながっています。それが、常に日本人のコンプレックスという形でいつも顔を出す、私はそのように感じています。 古墳時代、さらにはその昔の縄文・弥生時代の日本人のルーツを明らかにすることこそ、現代の、さらには将来の日本人の誇りとアイデンティティを取り戻す最大の要件だと思います。そこには、日本独自の世界に誇れるすばらしい文明があるはずです。 私は歴史学者でも、国粋主義者でもありませんが、日本人の「絶対の誇り」を取り戻すためには、大英博物館の資料の分析はもとより、今は封印され、立ち入りが禁止されている各種天皇陵の発掘調査等も、不敬にならないよう十分配慮をした上で実施することが必要不可欠の要件ではないかと考えます。
2012年12月9日 たまたま、次のメルマガを発見しました。大変興味深い記事です。参考にさせていただきます。
JOG-Mag No.766 歴史教科書読み比べ(5) ~ 古墳はなぜ作られたのか?2012/09/23
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